スピード感と朝令暮改の重要性、そして組織をまとめ上げる苦労
スタートアップの世界では、スピード感が経営の成否を左右する重要な要素です。市場環境や顧客ニーズが目まぐるしく変化する中、昨日の正解が今日には通用しないことは珍しくありません。そのため、経営者として求められるのは、柔軟な判断力と迅速な意思決定。そして、必要とあれば、朝令暮改をためらわない覚悟です。
「朝令暮改」という言葉には、時にネガティブな印象を抱く人もいます。方針が頻繁に変わると、組織の混乱や信頼低下を招くという懸念も確かにあるでしょう。しかし、スタートアップにおいては、変化に素早く対応し、状況に最適な解を導き出すことこそが、企業の成長と存続に不可欠です。
朝令暮改が必要な理由とその意義
私自身、この7年間で幾度となく方針転換を経験してきました。新規事業が計画通り進まない時、市場のニーズが急変した時、競合の動きに対応せざるを得ない時。最初に立てた計画に固執するのではなく、早い段階で軌道修正することで、新たなチャンスをつかめた場面は多々あります。特にスタートアップの世界では、「スピードこそ命」であり、完璧を求めすぎるよりも素早く実行し、間違いがあればすぐ修正する姿勢が重要です。
組織をまとめる苦労としんどさ
とはいえ、朝令暮改を繰り返す中で、組織をまとめ上げる難しさを痛感することも少なくありません。突然の方針転換に、チームメンバーが戸惑いや不安を抱えることもあります。場合によっては、「また変わったのか」「最初から無駄だったのでは」といった不満やフリクションが出ることもありました。
特に、スタートアップのようなスピード感重視の環境では、日々の業務で手一杯の中、方針転換が伝わりきらず、誤解やコミュニケーションギャップが生じることもあります。そんな時は、自分の決断が組織に混乱をもたらしているのではないかと悩むこともありました。時には「リーダーシップが足りないのではないか」と自己否定的な気持ちになることも多々あります。
組織との向き合い方
こうした状況を乗り越えるために、最も大切だと感じたのは、背景や意図をしっかりと伝えることです。なぜ方針転換が必要なのか、その決断がどのような結果につながるのかを、組織全体に共有する努力を怠らないこと。言葉足らずや一方的な指示ではなく、社員一人ひとりが納得感を持てる説明を心がけています。
また、日々の小さな成果や成功体験をチームと共有することで、変化を恐れず挑戦する文化を育むことも大切です。失敗しても良い、しかしその失敗から学び、次に生かすというポジティブなサイクルを作ることで、チームの一体感が生まれると実感しています。
理解されない時のしんどさ
それでも、すべてのメンバーに理解してもらえるとは限りません。時には、自分の決断が否定されたり、信頼されていないと感じたりすることもあります。経営者として孤独を感じる瞬間です。特に、チームの不満や疲弊を目の当たりにすると、自分の選択が正しかったのか悩むこともあります。
それでも、自分を支えてくれるのは、経営者としての信念です。どんなに厳しい状況でも、「自分の選択が組織の未来をつくる」という覚悟を持ち続けること。そして、短期的には不満や反発があっても、最終的に成果を出すことで信頼を取り戻すことを目指しています。
経営者に求められる資質
スタートアップの経営者には、スピード感と柔軟な判断力だけでなく、組織をまとめ上げる粘り強さと、人間関係のしなやかさが求められます。そして、時には批判や反発を受け止める強さも必要です。それでも、変化を恐れず挑戦を続けることで、組織とともに成長し、結果として信頼を築くことができるのだと思います。
これからも、変化に柔軟に対応しつつ、チームと一緒に未来を切り拓いていくことを目指していきます。理解されない時こそ冷静に向き合い、一歩ずつ前進することで、より良い組織をつくり上げていきたいと思います。