「年を取ると体は炎症を起こしやすくなる」――その真意は?
1. “炎症”には2種類ある
種類 | 特徴 | 具体例 |
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急性炎症 | 短期的・局所的に起こる防御反応 | 風邪で発熱、ケガが腫れる |
慢性低度炎症(Micro‑inflammation/Inflamm‑aging) | 体のあちこちで“うっすら”続く、ほぼ無症状の炎症 | 血中CRPやIL‑6が少しずつ上がる、関節がなんとなくこわばる |
日常会話で「抗炎症ケアをしよう」と言うときは、後者――加齢とともに高まりやすい慢性低度炎症を抑える、という意味で使われることが大半です。
2. なぜ歳を重ねると“炎症体質”になるのか?
代表的なメカニズム | 要点 |
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① 老化細胞(Senescent Cells)の蓄積 | 分裂能力を失った細胞が“居残り”、炎症性サイトカイン(SASP)を出し続ける |
② ミトコンドリア機能低下 & 活性酸素増加 | エネルギー工場が錆びる → ROS がDNAや細胞膜を攻撃し炎症を誘発 |
③ 免疫システムのリモデリング | 免疫細胞が“過剰反応 or 反応鈍化”しやすくなり、平時でも炎症性物質が漏れやすい |
④ 腸内環境のバリア低下 | 加齢・食習慣で腸壁がゆるみ、リポポリサッカライド(LPS)などの毒素が血中へ |
⑤ 内臓脂肪の増加 | 脂肪細胞自体がIL‑6やTNF‑αを放出し“炎症ホルモン工場”になる |
こうした要因が静かに、しかし複合的に作用して「何となく疲れやすい」「肌の治りが遅い」「血管年齢が上がる」といった形で現れてきます。
3. 放置するとどうなる?
- 筋肉・骨:タンパク質分解↑、骨吸収↑ → サルコペニア & 骨粗しょう症リスク
- 血管・心臓:動脈硬化を加速 → 高血圧・心血管イベント
- 脳:ニューロンへの酸化ストレス → 認知機能低下
- 代謝:インスリン抵抗性↑ → Ⅱ型糖尿病リスク
これが「炎症は老化の共通プラットフォーム」と言われるゆえんです。
4. 炎症を抑える7つの実践ポイント
カテゴリ | 具体策 | 補足 |
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食事 | 地中海+和食ベース(魚・オリーブ油・発酵食品)精製糖・加工肉・トランス脂肪を“例外食”に | ポリフェノールやオメガ3で炎症マーカー↓ |
運動 | 週150分の有酸素(Zone2)+週2回の筋トレ | 筋肉が抗炎症サイトカイン(IL‑10 等)を放出 |
睡眠 | 7–8時間・就寝起床時刻固定 | 深睡眠時は炎症抑制ホルモンが分泌 |
ストレス管理 | 呼吸法、散歩、趣味時間 | コルチゾール過多→炎症促進を防ぐ |
体重管理 | 体脂肪率(男15%未満・女23%未満)を目標に | 内臓脂肪が炎症源 |
腸内環境 | 食物繊維20g以上・発酵食品・適度な断食 | 腸壁保護&短鎖脂肪酸↑ |
ターゲットサプリ | ω‑3、ビタミンD、ターメリック(クルクミン)、レスベラトロール、ベルベリン 等 | 用量・休薬サイクルを守る |
5. まとめ
- 年齢=炎症そのものではなく、年齢とともに“炎症リスク因子”が累積するのが本質。
- 生活習慣+ピンポイントの栄養介入で “静かな火事” をコントロールすれば、老化のスピードを緩め、日々のパフォーマンスも保てる。
- 血液検査(CRP, HbA1c, 25(OH)D など)やウェアラブルデータ(HRV)で“自分の炎症温度”を見える化し、PDCAを回すのが最短ルート。